校長室より #19

2学期終業式式辞
皆さんこんにちは。今回は本日行いました2学期終業式の式辞を紹介します。
皆さん、おはようございます。2学期、そして1年の締めくくりにあたり、今年をふり返りお話ししたいと思います。
今年の初めに中国、武漢に端を発した新型コロナウィルスによる感染は、世界中で拡大の一途をたどり、私たちの生活も大きな影響を受け続けてきました。3月2日からの臨時休業により学校における全ての教育活動が停止するとともに、皆さんは外出することも友達に会うこともままならなくなり、実に3ヶ月もの間自宅での生活を余儀なくされました。入学式は1ヶ月遅れで実施し、6月1日の学校再開後も合唱コンクールは中止、学校祭・体育祭も感染防止対策を徹底した新たな企画を取り入れて実施しました。
2年生の沖縄修学旅行、シンガポール語学研修旅行も、クラスごとの研修旅行に切り替えて準備を進めてきましたが、やむを得ず3月に延期することとしました。
特に3年生にとっては、高校生活の集大成である春季総体や合唱コンクールなどが中止となるとともに、大学入学共通テストなど新たな入試制度が導入される年にもあたり、やりきれない思いや受験への不安などさまざまな思いを抱きつつ今日まで過ごしてきたことと思います。しかし、こうした困難な状況を乗り越えて、3年生の皆さんは学校祭・体育祭を思い出に残る素晴らしい行事に創り上げ、それぞれの進路実現に向けてたゆまぬ努力を続けてこられました。私は、3年生の皆さんを心から誇りに思います。そして、卒業までのあと3ヶ月間、先生方とともに全力で応援したいと思っています。
そのためにも、私たちはこれまで以上に新型コロナウィルス感染防止への意識を強く持ち行動する必要があります。そこで今日は、「日常と非日常」・「平時と非常時」の判断や行動を左右する心の働きについてお話しします。
昨年の避難訓練でもお話しましたが、人には、非常時にも平常時の判断基準をもとに考え行動する傾向があり、これを「正常性バイアス」と呼びます。もう少し説明すると「正常性バイアス」とは、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価してしまう特性のことで、新型コロナウィルス感染についても、「自分は感染しないし、他人に感染させることもない。それにもしかかっても軽症で済むだろう。」と考えがちだということです。そして、そうした考えを多くの人が持ち行動している結果として、現在も感染が拡大し続けているということなのです。
では、この「正常性バイアス」を働かせないようにするにはどうすればいいのでしょうか。このことについて、思想家の内田樹氏は「正常性バイアスを解除するためには、自分が見ているものだけから今何が起きているのかを判断せず、複数の視点から寄せられる情報を総合して判断することが大切であり、そのためにも普段から自分自身の個人的な感覚や主観にこだわりすぎることなく、他者の視点に立って物事を複眼的に捉える知的な態度や習慣を養うことが大切である。」と述べています。この、「他者の視点に立って物事を複眼的に捉える態度や習慣」というのは、「異質のものに対する理解と寛容」という教育目標に通じるものであり、また、各教科の授業における学び合いや探究学習における地域や専門家の方など多様な人々との交流、さらには書物や新聞を通してより広い世界に目を向け、自分自身のものの見方や考え方を豊かにすることなどによって養っていくことができます。
新型コロナウィルス感染に対する自分自身の「正常性バイアス」を解除することはもちろん、身の回りのいろいろなことに対して、皆さんには自分自身の主観にこだわりすぎることなく、他者の視点に立って物事を複眼的に捉えることを大切にしてほしいと思います。
そういう態度や習慣を身に付けていくことが教育目標に謳われている「教養豊かな社会人」への第一歩でははないかと思うのです。明日からの冬休みは、これまでになく自宅で過ごす時間が増えることと思います。この1年を振り返って自分自身を見つめ直し、新たな決意とともに新しい年を迎えてください。1月8日に、またお会いしましょう。
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