探究科学Ⅱ

理数探究科 2学年

探究科学Ⅱ 

発展性・独自性のある研究課題を設定した上で大学や研究者と連携して研究活動を行います。その中で事象の背景や現状を分析し、科学定根拠をもって仮説を立て、粘り強く解決する能力を身につけます。


【令和2年度】

課外研究テキスト類の作成

(1)目的
 3ヶ年にわたる課題研究の流れに沿い,これまで開発し使用してきたワークシートや資料の評価・改善を繰り返し,活動の流れを生徒自らが振り返り,成長を認識することが可能となる本校独自のワークシート集や実験ノートなどテキスト類の開発,課題研究指導事例集の作成を行うことで,福井県南部地域における理数教育の拠点校として,本地域の理数教育の充実を図る。

(2)実施内容
 課題設定から研究の背景・目的,仮説の設定,実験計画までを順番に進めることができる独自のワークシートを第1期より作成している。今年度は以下の3点について実施し,検証した。
 
 ア ワークシートの改良

 今年度はコロナ禍で4・5月が休校となったため,今までのワークシートを改良し,指示内容を丁寧に記述したり授業動画を作成しHPにアップしたりすることで,休校期間中でも各自で課題設定を進めることができるようにした。
 
 イ 実験ノートの対象の拡大

 昨年度までは理数探究科と海洋科学科で実験ノートを使用していたが,今年度は新たに普通科理系でも実験ノートを購入し,研究の記録を行った。
 
 ウ Google Formの活用

 ワークシート,実験ノートの他にGoogle Formも活用した。休校期間中に各自で考えた課題設定や研究の背景・目的,仮説,実験計画をGoogle Formに入力させることで集約した。さらに研究が進んでからもう一度同じ項目を入力させることで,その変容を見た。

(3)検証と課題
 ①検証

 ア ワークシートの改良
 休校期間中でも課題設定から実験計画までの流れをスムーズに行うことができた。指示内容を丁寧に書き加えたことで生徒一人でもワークシートに沿って研究を進めることができた点が有効だったと考える。
 
 イ 実験ノートの対象の拡大  
 1冊のノートを見れば今までの研究の流れを把握できるため,生徒自身が研究を振り返りやすくなった。また教員も生徒の研究の中身や進み具合を把握しやすくなり,今までより具体的なアドバイスを行えるようになった。
 
 ウ Google Formの活用  
 休校期間中に生徒一人一人が取り組んだ課題設定や研究の背景・目的等をGoogle Formで集約することで, 研究分野の分類分けがしやすく,グループ分けもスムーズに行うことができた。また,最初のころから自分の考えがどう変わったのかの変容を見ることで,1年間の成長を実感させることができた。

 ②課題
 ワークシート,実験ノート,Google Formと3種類を活用したが,情報が分散されるため,統一していく必要がある。今年度1月より生徒一人1台chrome bookが導入されたため,ワークシートをデジタル化し,実験の結果や助言のメモ等もchrome bookに行うことで,1台の中にすべての情報が入るようにするとよいのではないかと考える。


【令和元年度】

(1)科目の概要(シラバス)

学習の目標       科学及び数学に関する発展性・独自性のある研究課題を設定し,事象の背景や現状を分析し,科学的根拠を持って仮説を立て,粘り強く解決する能力を少人数グループでの課題研究活動を通して身につける。
授業の概要   自らの興味関心に基づいて研究課題を設定し,研究課題の背景や現状分析より導かれる問いに対して仮説を立て,その仮説を検証するというサイクルを繰り返す。課題の設定から発表までを自ら主体的に考え,行動できるように,「探究協働会議」で専門家による助言や,ルーブリックによるふりかえりを定期的に取り入れ,科学的な思考力,判断力,表現力を習得させる。
学習計画  4月  ガイダンス  
5月  テーマ設定・背景調べ・現状分析・仮説立案・検証計画
6月  第1回探究協働会議・ふりかえり
7月  検証計画修正・検証実験
9月  検証実験
10月  第2回探究協働会議・ふりかえり
11月  検証計画修正・検証実験
12月  第3回探究協働会議・ふりかえり
1月  検証実験
2月  第4回探究協働会議・研究発表会     
    福井県合同課題研究発表会     
    本校 SSH研究発表会
3月  論文制作
使用教材  課題設定能力のルーブリック
自主制作ワークシート
評価   課題研究の背景・目的・方法の記述内容を上記の観点に照らして評価する。パフォーマンス課題として論文を課すことで1年の探究科学Ⅰ,2年の探究科学Ⅱ,3年の探究科学Ⅲ(今年度は総合的な学習)における,ポスター発表,口頭発表,論文作成を通して3年間の変化を評価する。
備考  評価については,今年度のルーブリック評価を来年度の総合的な学習の時間に引き継ぎ,継続的に評価を続ける。

実験ノートについて
 本校では、研究テーマが決まる時期からはワークシートに書き込むのではなく、5㎜方眼のLABORATORY NOTEBOOK(実験ノート)を一人1冊購入し、そのノートにワークシートの内容や実験結果、メモ、助言等を記録していく。実験ノートに全ての情報が集約されている状態を目指している。

課題設定能力のルーブリック
課題設定能力評価規準 素晴らしい 4よい  3合格  2もう一歩  1かなりの改善が必要
学びに対する自主的、主体的な態度 自らの興味関心、知識や技術を十分に把握したうえで、それらを活用しようとしている記述がある。 自らの興味関心、知識や技術を十分に把握した記述がある。 自らの興味関心を示した記述がある。 自らの興味関心、知識や技術の認識が浅い。 自らの興味関心、知識や技術の記述がない。
科学的な問題への定式化とその解決 科学的な視点で具体的な課題設定や仮説が立てられており,科学的に解決可能な手法を用いた具体的な方法の記述がある。 科学的な視点で課題設定や仮説が立てられており,科学的に解決可能な手法を用いた方法の記述がある。 課題設定や仮説が立てられており,解決可能な手法の記述がある。 課題設定や仮説の記述に具体性がなく、科学的にあいまいである。 課題設定や仮説や手法の記述がない。
持続可能な開発発展という視点から見た地域の問題認識の深さ 地域の(身近な)様々な情報を正確に収集し、持続可能な社会の構築へ向けての問題の背景を総合的な視点でとらえ、自らの課題として課題を捉えた具体的な記述がある。 地域の(身近な)様々な情報を正確に収集し、持続可能な社会の構築へ向けての問題の背景を総合的な視点にとらえた記述がある。 地域の(身近な)様々な情報を収集し、持続可能な社会の構築へ向けての問題の背景についての記述がある。 地域の(身近な)情報の記述が少なく、偏っている。持続可能な開発発展に関する内容も少ない。 地域の(身近な)情報の記述がない。持続可能な開発発展に関する内容が示されていない。
社会的責任と研究者倫理の要素に分けた評価基準表の原案を作成することができた。 社会や研究領域においての貢献や献身的な態度、研究者としての適切な倫理観が具体的に示されている。 社会や研究領域においての貢献や献身的な態度、研究者としての適切な倫理観が具体的に示されている。 社会や研究領域においての貢献や献身的な態度、研究者としての適切な倫理的な記述が示されている。 献身的な態度、倫理的な記述が示されている。 社会や研究領域においての貢献や献身的な態度、倫理観が示されていない。

(2)平成30年度研究テーマ、成果発表実績、大学・専門機関連携

 テーマ 学会・成果発表会等,連携大学・専門機関
人を救う立体紙飛行機 第1回環境・防災地域実践活動高校生サミットでの発表
JAXA との連携
風力発電機におけるプロペラ形状の評価と実用性 第1回環境・防災地域実践活動高校生サミットでの発表;
ガウス加速器における磁性と射出速度の関係 豊高アカデミア~課題研究発表会~での発表
マイクロプラスチックの成分特定 アジア海洋教育者会議 高校生ポスター発表(台湾)
京都大学 田中周平準教授 との連携
アメリカアニマ・リーダーシップ・ハイスクール,
台湾暖暖・安楽高級中学,
シンガポールテマセックジュニアカレッジとの連携
プラナリアの記憶保存 福井県合同課題研究発表会での発表 
手洗い後の汚染状況と解決法  京都大学サイエンスフェスティバル2018福井県代表選考会での発表 
酸化チタンの抗菌作用 豊高アカデミア~課題研究発表会~での発表 
瓜割の水と雲城水の科学的分析による味の調査  若狭湾エネルギー研究センターとの連携 
ウズグモの白帯 豊高アカデミア~課題研究発表会~での発表 

(3)検証と課題

①検証
平成30年度より探究科学Ⅱのカリキュラムを展開した。1年次の探究科学Ⅰで設定したテーマについて「事象の背景や現状を分析し,科学的根拠を持って仮説を立て,粘り強く解決する能力を少人数グループでの課題研究活動を通して身につけさせる。」ことを目標に指導に取り組んだ。

1年次の探究科学Ⅰでテーマの設定が終わっているため,年度当初から実験や観察を通して課題の検証から始められたということが挙げられる。第1期に比べ検証の時間が増えたため,データを多くとったり,異なる視点からのアプローチを検討したりすることができた。また,大学や専門機関との連携の強化と各種学会等での発表経験を重視して取組んだ。研究分野の専門家から助言を受けることで,研究方針の修正ができるとともに,生徒の研究に対する動機付けとしての意義も大きかった。その上で探究協働会議の講師によって精査していただくことによって研究の意義について理解を深めた。これらの過程を経て得られた研究成果を学会等で発表することによりさらに多様な目線から助言を受けることでさらに研究内容を深化させることができた。



平成30年度協働会議講師

田中周平 氏 京都大学大学院地球環境学堂 准教授
篠田佳彦 氏 若狭湾エネルギー研究センター 主任研究員
秋山庸子 氏 大阪大学大学院工学研究科 准教授
前田桝夫 氏 福井大学ライフサイエンスイノベーションセンター 特命教授
川上真哉 氏 東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター 特任研究員





②課題
 1年次にテーマ設定が終わっているため仮説設定と検証のサイクルをもう1サイクル回すことを目指した。実際は実験計画の作成や実験に予想以上に時間がかかり1サイクルだけというグループが多くなった。自分たちで解決可能になるまで問いを小さくすることやその問いを最適な方法で確かめることが必要である。また,1年次の探究科学Ⅰでテーマ設定だけでなく実験方法や計画を立てることで,探究のサイクルを回すことができより深く学ぶことができると考える。
 第2期の評価観点「科学的な問題への定式化とその解決」「持続可能な開発発展という視点から見た地域の問題認識の深さ」「社会的責任と研究者倫理」についての評価基準の作成に取組みたい。

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