指導と評価

本校では平成25年度より大阪教育大の八田幸恵先生による指導の下、「真正の評価」論に基づく研究開発を進めています。
科学技術人材に必要な高次の能力・資質のうち,特に課題設定能力を抽出した上で,その能力を 「事象の背景や現状を分析し,科学的根拠をもって仮説を立て,自らが発展的,独自性のある課題を設定する能力」と設定し,その評価に関する実践的研究開発を継続してきました。

平成26年度以降,地域資源を活かした探究学習を展開していることをふまえ,若狭高校が培って欲しい「課題設定能力」を評価するための観点を,
 ①研究の動機
 ②科学的に解決可能な問題への定式化
 ③地域の問題認識の深さ
 ④持続可能な開発発展に役立つものであるかどうか
 ⑤学びに対する自主的・主体的な態度

と設定した上で,生徒の学習過程を形成的に評価し指導に活かすとともに,評価基準表も作成し,論文の総括的評価にも利用しています。

【総括的評価に用いる評価基準表】
(注 この評価基準表は、八田先生との協同研究によって、本校の課題研究評価用に作られたものです。初出は平成27年3月 平成26年度若狭高校SSH実施報告書です。)
レベル  パフォーマンスの特徴 

素晴らしい 
地域の様々な情報を正確に収集し,問題の背景を総合的な視点でとらえ,自らの課題として課題を捉えた記述がある。科学的な視点で具体的な仮説が立てられており,解決可能な手法を用いた科学的で具体的な解決方法の記述がある。地域及び学問領域において持続可能な開発発展に役立つ課題であることが具体的に説明されている。自らの興味関心,知識や技術を十分に把握したうえで,課題を設定することへの積極性や研究活動の意義を具体的に記述している。

よい 
地域の様々な情報を正確に収集し,問題の背景を総合的な視点でとらえた記述がある。科学的な視点で仮説が立てられており,解決可能な手法を用いた科学的な解決方法の記述がある。地域及び学問領域において持続可能な開発発展に役立つ課題であることが説明されている。自らの興味関心,知識や技術を十分に把握したうえで,課題を設定することへの積極性や研究活動の意義を記述している。
3 
合格
地域の様々な情報を収集し,問題の背景の記述がある。仮説が立てられており,解決可能な手法を用いた解決方法の記述がある。持続可能な開発発展に役立つ課題であることが説明されている。自らの興味関心を示し,課題を設定することへの積極性や研究活動の意味を示す記述がある。

もう一歩 
地域の情報の記述が少ない。偏った記述がある。仮説の記述の具体性がなく,科学的にあいまいである。自らの興味関心,知識や技術の認識が浅く,課題を設定することへの積極性や研究活動の意義の理解が浅い。
1 
改善が必要 
地域の情報の記述がない。仮説の記述がない。自らの興味関心,知識や技術の記述がない。課題を設定することへの積極性や研究活動の意義を記述していない。

生徒の状態 研究ノートに見る生徒の記述の変化
2年7月
・教員の指導がない状態
目的 伝統食品が今も食べられてい続けているのは、私たちの生活や健康に対して何かしらの効果があるためだと考え、どのような効果があるのかを調べる。
方法 塩ウニやへしこから有効な成分を抽出して分析を行う。ペプチド、食塩量、味
2年9月
・探究協働会議を1回経験
・ルーブリックを示された後
目的 伝統食品が今も食べられてい続けているのは、私たちの生活や健康に対して何かしらの効果があるためだと考え、どのような効果があるのかを調べる。
方法 市販品塩ウニと生ウニ熱水抽出エキスの塩分濃度、食塩添加量が15%と30%である伝統的な製造方法で熟成させた塩ウニのタンパク質濃度、ACE阻害活性をローリー法とCushmanの方法で測定 した。さらに熱水抽出エキスを高血圧自然発症ラットに投与し、一定時間ごとに血圧を測定した。
2年1月
・2回の探究協働会議を経験
・冬休みに福井県立大学の研究室で実験を継続した後
目的 生鮮バフンウニに、7%以上の食塩を加え、熟成される塩ウニは、福井県の城主松平家が、開発製造した日本3大珍味のひとつである。越前岸周辺では、現在でも珍味や保存食としてだけでなく滋養強壮や体質改善などに効果があるとされ製造されている。そこで、本研究では、塩ウニの健康性機能を探索するために塩ウニ熱水抽出エキスの高血圧抑制効果について研究を行った。

方法 生鮮バフンウニ、市販品食塩添加7%塩ウニ、伝統的製法の食塩添加15%塩ウニの、それぞれの熱水抽出エキスを調整した。熱水抽出エキスの塩分濃度、ペプチド濃度を測定し、高血圧抑制効果はCushmanの方法によるACE阻害活性測定と高血圧自然発症ラット(SHR)の経口投与から測定した。
上記の生徒の記述の変化からは、科学的思考力が伸長していることがわかります。
評価の観点に基づく、丁寧な形成的評価が功を奏したと言えましょう。
とはいえ、資質・能力の育成につながる評価の観点、基準表となるよう、より洗練し,精緻なものにしていく必要があります。