令和8年度始業式

令和8年度始業式
式辞
今日は、ある言葉から始めたいと思います。
来週月曜からいよいよ始まるドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』。
の中で、出口夏希さん演じる生徒が、こんな苦しい言葉を放ちます。
「うちらにしかできんことなんてないし、だいそれた夢があるわけでもない。
だれからも期待されてないもん。
何言ったって、その程度だって思われて終わり。」
こういう気持ちになったことがある人は、
多いかも知れません。
自分には特別なものなんてない。
大きな夢なんてない。
どうせ自分が何かを言っても、やっても、その程度だと思われて終わる。
そんなふうに、自分で自分に線を引いてしまうこと、
自分で自分の天井を創ってしまうことは、誰にでもあります。
その言葉に、北村さん演じる先生はこう返します。
「やってみなきゃ、わかんないでしょ」
自分の中にまだ見えていないものは、やってみる中でしか見えてこない。
私はこの春、ロケ現場で出演者の皆さんと接し、そのことを確信しました 。
出演者の皆さんは、ただ見た目が整っている、ということではなく、
一人ひとりが本当に印象に残る方々でした。
同じ雰囲気の人は一人もいない。
それぞれに、その人にしかない空気や立ち方がありました。
でも、それはただ自然にそうなっているわけではないと思います。
皆さんそれぞれが、このドラマを少しでも良い作品にしようと、
本当に真剣に挑戦している。
その挑戦や失敗の積み重ねが、
その人にしかない個性や存在感になって表れているのだと、私は感じました。
また、教師としての在り方という意味でも、北村さんの姿は印象的でした。
撮影の合間にも、生徒役の皆さんからの質問に、同じ目線で向き合い、
言葉を返していらっしゃいました。その空気が、とてもよかった。
私は、その姿を見て、学校も同じだと思いました。
学校は、先生だけでつくるものではありません。
生徒がいて、問いがあって、動きがあって、空気が生まれる。
北村さんも言っていましたが、
学校は、やはり生徒が主役です。
今回、海洋科学科の生徒の皆さんが
エキストラとしてこの作品づくりを支えてくれていることにも、
単なる協力以上の意味があります。
若狭高校生としてそこにいること自体が、
この物語に本物の命を吹き込んでいる。
私は、それを本当に誇らしく思います。
だから、学校の主役である皆さんには、
一歩踏み出して、自分でも知らない自分に出会ってほしい。
そして、自分と違う誰かの良さに気づきながら、
自分らしさを育てて欲しい。
私はそう願っています。
そしてこの願いは、あのドラマのポスターに表れているように思います。
みんな、上を向いている。ただ見上げているのではない。
天井の先を見ている。
主題歌であるVaundyの『イデアが溢れて眠れない』にも、
天井の先へ目を向けていこうとするような響きがあります。
だからこそ私は、あの「上を向く姿」に強く心を動かされます。
天井の先には、まだ見ぬ景色がある。
だからこそ、上を向く。だからこそ、踏み出す。
やってみなきゃ、わからない。
今は、情報が多い時代です。
調べるだけで分かった気になり、
「自分には無理だ」と先回りして諦めてしまうこともある 。
しかし、それがいちばんもったいないことです 。
やってみなければ、向いているかも、楽しいかも、
自分にどんな力が眠っているかも分かりません 。
だからこそ、この一年、大切にしてほしいことが二つあります 。
一つは、一歩踏み出して、まだ見ぬ自分に出会うこと。
もう一つは、自分と違う誰かの良さに、去年より一つ多く気づくことです。
これこそが、本校が大切にしてきた
「異質のものに対する理解と寛容」
「教養豊かな社会人」の本質です 。
自分と違うものに出会ったとき、それを「面白い」と受け止められる力 。
その面白がる力こそが、皆さんの人としての深さであり、本当の教養です 。
「やってみたから、分かった」「やってみたから、出会えた」。
年度末に、そんな言葉があふれる一年になりますように!
心から期待しています 。
令和8年4月8日
福井県立若狭高等学校長 渡邉久暢





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