冬休み前集会 校長の言葉

皆さん、おはようございます。皆さんにとって、今年はどんな年だったでしょうか。先日、今年の漢字が発表され「金」に決まったことを知っている人も多いでしょう。パリオリンピックの金メダルラッシュや大谷選手の金字塔のような感動する場面を思い出します。きっと皆さんにとっても、それぞれ充実した高校生活を送ることができたことと思います。
今日は、若狭高校に受け継がれている言葉について紹介します。「学如不」という言葉ですが、この額がどこに掲げてあるか分かりますか。
正解は、生徒玄関の校舎2階の自習室です。これは「高田早苗さん」といわれる法学博士、のちに文部大臣になられた方が書かれた文字です。この額が若狭高校に寄贈されたのは旧制小浜中学校の時代です。若狭地域の高等教育機関であった本校に期待をもたれて寄贈していただいたものだと思われます。この文字が何を表しているのかについてお話をしたいと思います。
この額に書かれてある文字は、「まなぶにしかず」と読み、論語の一節です。つまり、「自分で考えることも大切だが、それ以上に学ぶことが重要である」という教えになります。
こんなエピソードがあります。ある自動車会社の経営者が、その当時の最高のエンジニアを破格の年俸でスカウトし、新しい車の設計を依頼しました。ただし、その条件として過去のデータは一切見ないというものでした。経営者は独創的で画期的な車の完成を期待したのでしょう。そして待望の車が完成してみると、なんとその車の性能は平凡なエンジニアが、過去のデータを参考にして作った車よりもはるかに劣っていたそうです。いくら優れた人であっても、過去のデータを土台にしなければ、それをさらに上回るものを作り出すことが難しいということを表した一例です。一人の人間が人生の中で、経験できることや考えられることは限られています。電話も糸電話から始まり、多くの人の手による改良に改良を重ね、年月を経て今のスマートフォンになったのです。今ある成果を土台に研究を進めることで、さらに高性能のツールが開発されていくのだと思います。
中国の古典である「礼記」の一説に「玉琢かざれば器をなさず、人学ばざれば道を知らず」という有名な言葉があります。宝石の原石は研磨しなければ光輝かず、人間も学ばなければ正しい生き方を知ることができないという意味の言葉です。いくら魅力的な原石であったとしても、それを磨かなければ宝石としての価値はありません。確かな技術をもって研磨してこそ価値ある宝石になるのです。また、人類が長い年月をかけて営々として築いてきた文化を伝承することで、自分の進むべき道が多くの選択肢の中からはっきりと浮かび上がるのかもしれません。
人生の限られた時間の中で、少しでも人間として成長したいという切実な気持ちがあれば、先にその苦悩を克服した人の知恵を自らの人生に取り入れていくこと、それが大きく飛躍できる「学び」となるのだと考えます。
明日から冬休みが始まります。「学に如かず(まなぶにしかず)」のごとく、今この時を大切にして教科や、読書、周りの人と対話と自らの学びを進めてもらいたいと思います。
3年生は、年が明けるとすぐに共通テストです。最後の追い込みだと思いますが、当日全力を出し切るためにも、健康にはくれぐれも気をつけてください。
では、皆さん、寒い時期ではありますが、年明け、また、元気な姿を見せてください。来年もきっと皆さんにとって、良い年になることを祈っています。以上で私からの話を終わります。
校長 橋本有司
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