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宇宙日本食「サバ醤油味付け缶詰」

2018年11月、若狭高校のサバ缶はJAXAから宇宙日本食として認証されました

2018年11月12日に行われた認証書授与式ではJAXAきぼう利用センター長 田崎一行氏、宇宙飛行士 若田光一氏より認証書が手渡された

1. 野口宇宙飛行士に食された「サバ醤油味付け缶詰」

戦前の実習の様子

明治28年に日本初となる福井県簡易農学校水産科が設置された翌年、明治29年には製造工場を併設し、若狭地域で漁獲された魚介類で缶詰を製造していた。平成18年には教育施設で2例目となる「サバ醤油味付け缶詰」で社団法人大日本水産会HACCPの認証を受けた。

小浜水産高校時代は、年間1万個ほどの製造を行い、水産加工業に就職できる人材の育成を目指し教育を実施していた。
平成25年の若狭高等学校との統廃合により、製造数を抑え、食品加工の原理や食品分析などを重視する製造実習に変更した。現在の原料は、小浜市田烏地区で養殖されているマサバを原料に砂糖、醤油、葛粉を加えて宇宙日本食に適した缶詰として製造している。製品は、JAXAに納品のほか、道の駅おばまや産業フェアでの販売実習で販売している。

現在のサバ缶実習の様子

HACCP

HACCPシステムは、1960年代にNASA(米国航空宇宙局)が安全な宇宙食を製造するための衛生管理システムとして民間企業などと共同で研究開発した方法である。HACCPはHazard Analysis and Critical Control Pointの略称で危害分析重要管理点と訳される。HA(危害分析:原料や製造工程中に何が危害になるかを事前に調べる、生物的・化学的・物理的危害などがある)とCCP(重要管理点:原料や製造工程中でここをしっかり管理しなければ安全上問題のある製品になるかもしれないと思われる管理項目)の2つの部分からなり、食品の安全性を確保するために、食品に発生する可能性のある危害を明確にし、その危害の発生を防ぐために厳格に管理するシステムである。

HACCPの認証を受けた清潔感のある実習工場

本校ではHACCPシステムを授業で取り入れることで,高度な食品管理を行う学習をしている。平成18年(2006)に全国の水産高校で2例目としてサバ味付け缶詰製造工程で認証(社団法人大日本水産会)を受け,高い教育効果を上げている。

2. 経緯の概要

宇宙食サバ缶はすべてHACCPを取得した本校の実習工場で作られている

平成18年HACCPを取得し、授業でHACCP基本技能検定(全国水産海洋系高等学校長協会主催・社団法人大日本水産会後援)の内容を講義していたとき、ある生徒が「私たちの缶詰を宇宙にとばせるのでは」という問いかけから活動が始まった。

科目「課題研究」において,これまでに学んできた食品の製造・保存技術を生かし、製造方法、保存形式、製品完成まで生徒自身が自分で考え、研究開発を行った。代々研究を引継ぎ、延べ30名ほどの生徒が研究を行った。研究は班別の少数で行い、製造においては、海洋探究コース、海洋資源コースの生徒が担当している。

 

研究を記録する通称「黒ノート」

 

小浜水産高校
2006年度12月実習工場の「サバ醤油味付け缶詰」製造工程がHACCP取得
(宇宙食製造の食品管理基準)
2007年度9月18日講演「宇宙食について」講師:岸詔子氏(JAXA宇宙教育センター主査)
12月試作品完成 「雑炊君」「ワカメクッキー」
2008年度9月10日技術指導「宇宙食について」講師:中沢 孝 氏
(JAXA有人宇宙環境利用ミッション本部有人宇宙技術部
宇宙飛行士健康管理グループ 主任開発員)
1月WEB会議システムを利用した遠隔授業および作成した試作品の講評
2009年度2月20日星出彰彦宇宙飛行士より応援メッセージをいただく。
以後 毎年 JAXAより宇宙日本食について講演
若狭高校
2013年度SSHの課題研究として活動を再開
9月JAXAより宇宙日本食について講演・サバの缶詰認証へ試み
WEB会議システムを利用した遠隔授業
2014年度12月宇宙日本食の食品候補リストによる食品候補の応募申し込み
食品候補に選定 以後、認証に向けての研究と書類作成
2018年度1月JAXAによる製造工場査察
11月1日「サバ醤油味付け缶詰」宇宙日本食認証の連絡をいただく。
11月12日宇宙日本食認証式
授与式にはJAXA理事で宇宙飛行士の若田光一様にご出席いただき、同じくJAXAのきぼう利用センター長の田崎一行様より認証書が本校の研究メンバーに手渡されました。海洋キャンパスの加工工場視察のあと、サバ缶を試食した若田さんから「まろやかで食べやすく、おいしい」と太鼓判をもらいました。早ければ、来年末に野口聡一宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)滞在時に採用される可能性もあるということです。
2019年~20年度宇宙飛行士の要望に応え、硬さや家庭的な味へさらなる研究を継続
11月27日野口聡一宇宙飛行士が国際宇宙ステーションからのYOUTUBE第一弾として若狭高校海洋科学科製造開発の鯖缶詰を「大変美味しいです。美味しい~」と宇宙での試食を交えながら紹介いただいた。
2021年度~3Dフードプリンターで鯖醤油煮を製造することを目標に3Dフードプリンターの研究開発開始
「地域の宝となった宇宙鯖缶が、地域や地域企業の利益となり還元されること」を目標に研究活動を実施。「宇宙鯖缶地上化計画」と題して、より多くの方々に食していただけるように地元企業と共同で商品開発を実施、「若狭宇宙鯖缶」と命名し、一般消費者向けに味付けの改善やパッケージの作成
2022年度3月8日「宇宙鯖缶地上化計画」商品完成「若狭宇宙鯖缶」としてお土産屋等で発売開始

3. 海洋科学科について

学科として、環境・漁業・食品・バイオテクノロジー・経済など幅広い分野を学習する。

食品分野では。水産物をはじめ農畜産物を含む食品の保蔵・加工・流通についての知識や技術を学習している。あわせて食品製造や食品衛生の最新の内容を理解させるとともに、食品における様々な事象や製造を通じて思考力・協調性・表現力など資質能力の向上も目指している。

全国水産海洋系高校の中でトップクラスの進学実績があり、国公立大学進学をはじめ、毎年、公務員や漁業者も輩出するユニークな学科である。

地域への利益の還元を目標に、地元企業と共同開発した「若狭宇宙鯖缶」は2022年3月8日発売開始

生徒コメント

若狭高校では、スーパーサイエンスハイスクールに指定され、全校で探究的な学習に取り組んでいます。私たちの研究は地元福井小浜で有名なマサバを加工し、宇宙日本食にすることでふくいの加工技術と魚介類の品質の高さを世界の人々に知ってもらうことが目的です。

研究のルーツは、平成18年に全国に先駆けて本校のサバ缶製造において食品衛生基準HACCPを取得したことが始まりです。HACCPはNASAがつくった食品の安全衛生システムです。

若狭高校海洋科学科一期生の先輩たちは、宇宙空間で開封した際に液が飛び散り、機械を壊してしまうことを防ぐために調味液に粘性をつける研究をしました。JAXAの定める粘性(700~N/㎡以上)をクリアするため、検討を行い、葛粉が優れていることが分かりました。調味液に対して9%の葛粉を使用することで最も良い粘性の宇宙食サバ缶詰が出来あがりました。

平成26年には研究の成果を活かし、JAXAの宇宙日本食の「食品候補」に応募し、選定されました。選定後は、工場の製造工程の見直し、製品の保存検査、官能検査などたくさんの課題に取り組みました。

私たちは、工場で大量生産する際の調味液の加熱と味付けについて研究を行いました。工場では、一度にたくさんの缶詰を製造するため、実験室とは異なる値でくず粉の粘性を調整する必要があります。さらに宇宙では、人の味覚が鈍くなるため通常の味付けより濃くする必要があります。私たちは先輩の試作品を規準に4段階に味を濃くし、宇宙飛行士がおいしくたべることのできるサバの缶詰を製造しました。官能検査や保存試験も無事にクリアし、認証に至りました。

若狭には、古くから、京の都に鯖を運んだ鯖街道があります。この鯖街道が国際宇宙ステーションまで届いたのです。

 

 

 

関連書籍

さばの缶づめ、宇宙へいく | 小坂康之, 林公代 |本 | 通販 | Amazon

宇宙食になったサバ缶 | 小坂 康之, 別司 芳子 |本 | 通販 | Amazon

 

参考リンク

奇跡体験!アンビリバボー:サバ缶を宇宙に飛ばした高校生SP – フジテレビ (fujitv.co.jp) 2023.3.30

宇宙鯖缶地上化計画 | 福井県立若狭高等学校 (wakasa-h.ed.jp) 2022.2.23

野口聡一が宇宙に「サバ缶」を持ち込んだ背景事情 メイドインジャパンの食や衣服の技術伝える契機 | 宇宙 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net) 2021.12.28

「宇宙食サバ缶」英語の教科書に掲載 | 福井県立若狭高等学校 (wakasa-h.ed.jp)

野口宇宙飛行士の宇宙暮らし010:さば缶の宇宙的レシピ – YouTube 2021.1.27

野口宇宙飛行士の宇宙暮らし 031 さばと柿の種とちりめん山椒の炊き込みご飯 – YouTube 2021.2.28

高校生が研究開発したサバ缶がJAXAの宇宙食として認証 | SCENARIO 社会課題の解決を目指して (jst.go.jp) 2020.9.23

鯖街道から宇宙へ! ~高校生がつくったサバ缶がJAXA認証の宇宙日本食に~ | Science Portal – 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」 (jst.go.jp) 2019.12.12

福井県 若狭高校 | 開発食品サバ缶が「宇宙食」に 先輩から後輩へ12年の夢実現 | 善きことをした高校生達 – 日本の学校 (js88.com) 2018.12

 

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